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相続手続き 2025.11.12

第5章【認知症・老後対策】「実家の名義」で後悔しないための生前対策   

導入:親の認知症で「実家の財産」が凍結するリスク 

相続登記の義務化への対応は、親御様の相続が起きた後の「事後対応」です。しかし、50代・60代の皆様が本当に心配すべきは、元気なうちにこそできる「生前対策」ではないでしょうか。 

特に、認知症などで判断能力を失ってしまうと、その方の財産は「凍結」した状態になり、子が代わりに実家を売却したり、有効活用したりすることが非常に難しくなります。 

この章では、将来の「争族」や「財産凍結」を防ぐために、司法書士の視点から特に重要となる生前対策を解説します。 

1. 50代から始める「争族」回避のための3つの対策 

「家族が争わないため」や「節税」は、生前対策の大きな理由です。トラブルを避けるために、まずはこの3つの対策を検討しましょう。 

対策1:遺言書を作成する

  • 遺言書の重要性: 遺言書は、ご自身の財産を「誰に」「何を」相続させるかという最終的な意思を伝えるものです。遺言書があれば、故人の遺志が明確になることで相続人間で納得感が得られ、相続手続きがスムーズに進むことが期待できます。 
  • 「遺言書を作成しない人」の誤解: 「まだ早い」「財産が少ないから大丈夫」といった誤解から遺言書を作成しない人もいますが、実家という大きな不動産がある場合は、揉め事防止のために遺言書は大変有効です。 

対策2:家族信託(民事信託)の活用 

  • 「財産凍結」の回避策: 家族信託は、生前の相続対策や認知症対策のため、自分の財産管理を信頼できる家族などに任せる仕組みです。 
  • 実家の管理を託す: 親御様が判断能力を失ってしまった後でも、この仕組みを利用していれば、子などの家族が代わって実家の管理や売却をスムーズに行うことができます。信託契約書は専門家のアドバイスを受けて作成し、公正証書とすることが推奨されます。 

対策3:生前贈与の検討 

  • 老老相続への備え: 高齢者から高齢者へおこなわれる「老老相続」の問題点の一つは、相続が続いておこる「数次相続」の発生リスクです。生前贈与は、老老相続や数次相続に備えられることの一つにあげられます。 
  • 税制改正への注意: 令和5年の税制改正では、相続税の生前贈与を加算する期間が3年から7年に延長されました。生前贈与を検討する際は、税理士などと連携して税務上の影響を考慮することが重要です。 

2. 「家族信託」:認知症で実家が売却できなくなる事態を防ぐ 

親御様の判断能力が衰えてしまった後に、その財産を介護や生活に充てたい場合、本来は「法定後見制度」を利用することになります。しかし、後見制度は手続きが複雑で、裁判所が選任する後見人が財産管理を行うため、家族の自由な売却が難しくなる場合があります。 

家族信託は、親御様の意思がはっきりしているうちに契約を結んでおくことで、本人が判断能力を失った後でも、財産の管理や処分がスムーズに行え、相続人の手間や不安も解消されます。 

  • 司法書士は家族信託の専門家: 司法書士は、相続登記の手続き代行だけでなく、将来を見据えた最適な遺産分割のアドバイスとして、認知症対策としての家族信託などの提案も可能です 。 

3. 損をしないための「相続した実家の売却・活用」の鉄則 

相続した実家を将来的にどうするかは、50代・60代にとって現実的な課題です。「相続したくない実家」を相続するデメリットは、固定資産税の負担維持管理の負担空き家化によるペナルティや近隣トラブルなど多岐にわたります。 

  • 売却を検討すべきケース: 不動産の活用方法がない、維持や管理が大変、土地や家の価値がないと感じる場合は、早期に売却することが望ましいでしょう。 
  • 売却時の税制優遇: 実家を売却する際には、「空き家の3,000万円特別控除」などの税制優遇が使える場合があります。売却のタイミングや手続きについては、税理士とも連携して慎重に検討しましょう。 

【次のステップ】 

次回の記事では、いよいよ本シリーズの締めくくりとして、司法書士に依頼するメリットを費用相場とともに整理し、専門家を賢く選ぶための具体的な方法を解説します。 

次回の記事:

「司法書士に頼むメリットと費用相場:損をしない専門家の選び方 https://atsutanomori-souzoku.com/blog/blog-234/」    


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