第5章【認知症・老後対策】「実家の名義」で後悔しないための生前対策

導入:親の認知症で「実家の財産」が凍結するリスク
相続登記の義務化への対応は、親御様の相続が起きた後の「事後対応」です。しかし、50代・60代の皆様が本当に心配すべきは、元気なうちにこそできる「生前対策」ではないでしょうか。
特に、認知症などで判断能力を失ってしまうと、その方の財産は「凍結」した状態になり、子が代わりに実家を売却したり、有効活用したりすることが非常に難しくなります。
この章では、将来の「争族」や「財産凍結」を防ぐために、司法書士の視点から特に重要となる生前対策を解説します。
1. 50代から始める「争族」回避のための3つの対策
「家族が争わないため」や「節税」は、生前対策の大きな理由です。トラブルを避けるために、まずはこの3つの対策を検討しましょう。
対策1:遺言書を作成する
- 遺言書の重要性: 遺言書は、ご自身の財産を「誰に」「何を」相続させるかという最終的な意思を伝えるものです。遺言書があれば、故人の遺志が明確になることで相続人間で納得感が得られ、相続手続きがスムーズに進むことが期待できます。
- 「遺言書を作成しない人」の誤解: 「まだ早い」「財産が少ないから大丈夫」といった誤解から遺言書を作成しない人もいますが、実家という大きな不動産がある場合は、揉め事防止のために遺言書は大変有効です。
対策2:家族信託(民事信託)の活用
- 「財産凍結」の回避策: 家族信託は、生前の相続対策や認知症対策のため、自分の財産管理を信頼できる家族などに任せる仕組みです。
- 実家の管理を託す: 親御様が判断能力を失ってしまった後でも、この仕組みを利用していれば、子などの家族が代わって実家の管理や売却をスムーズに行うことができます。信託契約書は専門家のアドバイスを受けて作成し、公正証書とすることが推奨されます。
対策3:生前贈与の検討
- 老老相続への備え: 高齢者から高齢者へおこなわれる「老老相続」の問題点の一つは、相続が続いておこる「数次相続」の発生リスクです。生前贈与は、老老相続や数次相続に備えられることの一つにあげられます。
- 税制改正への注意: 令和5年の税制改正では、相続税の生前贈与を加算する期間が3年から7年に延長されました。生前贈与を検討する際は、税理士などと連携して税務上の影響を考慮することが重要です。
2. 「家族信託」:認知症で実家が売却できなくなる事態を防ぐ
親御様の判断能力が衰えてしまった後に、その財産を介護や生活に充てたい場合、本来は「法定後見制度」を利用することになります。しかし、後見制度は手続きが複雑で、裁判所が選任する後見人が財産管理を行うため、家族の自由な売却が難しくなる場合があります。
家族信託は、親御様の意思がはっきりしているうちに契約を結んでおくことで、本人が判断能力を失った後でも、財産の管理や処分がスムーズに行え、相続人の手間や不安も解消されます。
- 司法書士は家族信託の専門家: 司法書士は、相続登記の手続き代行だけでなく、将来を見据えた最適な遺産分割のアドバイスとして、認知症対策としての家族信託などの提案も可能です 。
3. 損をしないための「相続した実家の売却・活用」の鉄則
相続した実家を将来的にどうするかは、50代・60代にとって現実的な課題です。「相続したくない実家」を相続するデメリットは、固定資産税の負担や維持管理の負担、空き家化によるペナルティや近隣トラブルなど多岐にわたります。
- 売却を検討すべきケース: 不動産の活用方法がない、維持や管理が大変、土地や家の価値がないと感じる場合は、早期に売却することが望ましいでしょう。
- 売却時の税制優遇: 実家を売却する際には、「空き家の3,000万円特別控除」などの税制優遇が使える場合があります。売却のタイミングや手続きについては、税理士とも連携して慎重に検討しましょう。
【次のステップ】
次回の記事では、いよいよ本シリーズの締めくくりとして、司法書士に依頼するメリットを費用相場とともに整理し、専門家を賢く選ぶための具体的な方法を解説します。
次回の記事:
「司法書士に頼むメリットと費用相場:損をしない専門家の選び方 https://atsutanomori-souzoku.com/blog/blog-234/」
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