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相続手続き 2026.10.25

相続登記の猶予は2027年3月末まで|今から間に合う逆算スケジュール

相続登記の義務化で、2024年3月以前の相続も原則2027年3月31日までに申請が必要です。親の名義のまま放置している方へ、司法書士・土地家屋調査士が今から間に合う逆算スケジュールと、間に合わない時の対処法を解説します。

「親が亡くなって何年も経つけれど、実家の名義はそのまま」

「義務化されたのは知っているが、うちはまだ大丈夫だと思っていた」

もし少しでも心当たりがあれば、この記事は今読んでおく価値があります。2024年4月より前に発生した相続で、まだ名義変更(相続登記)をしていない不動産は、原則として2027年3月31日が申請期限です。 本記事の公開時点(2026年10月下旬)から数えると、残りは約5か月。戸籍集めと家族の話し合いを考えると、決して余裕のある期間ではありません。

ただし、今から動き始めれば、多くのケースはまだ十分に間に合います。 さらに、どうしても話し合いがまとまらない場合でも、期限内に義務を果たす「相続人申告登記」という手段があります。

この記事では、相続登記の現場を経験してきた立場から、

  • 自分の相続がいつまでに何をすればよいのか(期限の正しい読み方)
  • 2027年3月末から逆算した、具体的な月別スケジュール
  • 実務で実際につまずきやすいポイントと、間に合わないときの対処法

を、順番にお伝えします。

この記事の執筆者

雁部 陽介(かりべ ようすけ)  
あつたの杜事務所/司法書士・土地家屋調査士・不動産コンサルタント

大手司法書士法人での実務経験を経て、大手不動産マネジメント会社にてオフィスビル・大型物流施設のプロパティマネジメント業務に従事。表示に関する登記と権利に関する登記の双方を一つの窓口で完結できる体制を強みとし、法務手続にとどまらない不動産活用の視点から相続・登記のご相談に対応しています。

保有資格:司法書士/土地家屋調査士/不動産コンサルティングマスター/宅地建物取引士 など

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目次

  1. 結論:2024年3月以前の相続は「原則2027年3月31日」が期限
  2. あなたの期限はいつ?ケース別早見表
  3. 今から間に合う!2027年3月末までの逆算スケジュール
  4. 放置するとどうなる?過料よりも怖い「動かせない不動産」
  5. 実務でよくある「時間がかかる」5つの落とし穴
  6. 期限に間に合わないときの最終手段「相続人申告登記」
  7. 3月末はもう一つの期限|登録免許税の免税措置
  8. 自分でやる?専門家に頼む?判断の目安
  9. まとめ
  10. よくある質問(Q&A)

1. 結論:2024年3月以前の相続は「原則2027年3月31日」が期限

要点:2024年4月1日より前に発生した相続で、登記をしていない不動産も義務化の対象です。期限は「2027年3月31日」と「取得を知った日から3年」のいずれか遅い日です。

相続登記の申請義務化は、2024年(令和6年)4月1日に始まりました。ルールの骨格は次の2つです。

  • 相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する
  • 正当な理由なく怠った場合、過料の対象となる

見落とされがちなのが、この義務は「義務化より前の相続」にも適用されるという点です。10年前、30年前に亡くなった親や祖父母の名義のままになっている不動産も対象になります。法務省のパンフレットでも、2024年4月1日より前に相続を知った不動産の期限は「最短で令和9年3月31日」と案内されています。

ここで「最短で」という言葉に注目してください。施行日より前の相続については、

  • 施行日(2024年4月1日)から3年 = 2027年3月31日
  • 相続で取得したことを知った日から3年

のいずれか遅い日が期限になります。つまり、親が亡くなったことも実家の名義も以前から知っていた方は、2027年3月31日が期限です。一方、「最近になって祖父名義の山林があることを初めて知った」というようなケースでは、知った日から3年が期限になります。


2. あなたの期限はいつ?ケース別早見表

要点:期限は「いつ相続が起きたか」「遺産分割がまとまったか」で変わります。まずは自分がどの行に当てはまるかを確認してください。

あなたの状況申請期限
2024年3月以前に相続が発生し、以前から把握していた2027年3月31日
2024年3月以前の相続だが、取得を知ったのが2024年4月以降知った日から3年以内
2024年4月以降に相続が発生した相続と取得を知った日から3年以内
相続人申告登記をした後に遺産分割がまとまった遺産分割が成立した日から3年以内
祖父母など、何代も前の名義のまま原則2027年3月31日

「祖父の名義のまま」はどうなる?

名義人が亡くなり、その相続人(たとえばお父様)も登記をしないまま亡くなっている状態を、実務では「数次相続」と呼びます。この場合も義務の対象で、期限は原則として2027年3月31日です。

数次相続は、相続人の数が世代ごとに増えていくため、戸籍集めと話し合いに最も時間がかかる類型です。叔父・叔母、いとこまで関係者が広がることも珍しくありません。「祖父名義」と判明した時点で、できるだけ早く着手することをおすすめします。

「遺言書がある場合」は?

遺言で不動産を取得した相続人も、同じく3年以内(施行日前の相続は原則2027年3月31日まで)の申請義務があります。遺言書があると遺産分割の話し合いが不要な分、手続は早く進むことが多いですが、自筆の遺言書は家庭裁判所の検認が必要な場合があり、その分の期間を見込んでおく必要があります。


3. 今から間に合う!2027年3月末までの逆算スケジュール

要点:一般的な親子間の相続であれば、11月中に着手すれば3月末の申請に十分間に合います。「年末年始の帰省」を家族の話し合いの場として使うのが、最も現実的な進め方です。

相続登記は、ざっくり言えば「①何を持っているか調べる → ②誰が相続人かを確定する → ③誰が相続するか決める → ④書類を整えて申請する」という流れです。2026年10月下旬からのスケジュールに落とし込むと、次のようになります。

STEP1(〜11月中旬):不動産の洗い出しと現状確認

まず「どの不動産が、誰の名義になっているか」を確認します。

  • 登記事項証明書(登記簿):法務局で取得。名義人・持分・担保の有無がわかります
  • 固定資産税の名寄帳:市区町村で取得。その市区町村内にある、亡くなった方名義の不動産が一覧で確認できます
  • 所有不動産記録証明制度:2026年2月から始まった制度で、特定の人が名義人となっている不動産を全国単位で一覧的に証明してもらえます

【実務メモ】「実家の土地と建物だけ」と思っていたら、私道の持分や、隣接する細長い土地が別の地番で残っていた、というケースはよくあります。私道持分の登記を漏らすと、将来売却するときに買主の通行で問題になります。洗い出しは名寄帳と登記簿の両面から行うのが確実です。

STEP2(11月〜12月):戸籍の収集と相続人の確定

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍と、相続人全員の現在の戸籍を集めます。2024年3月からは「戸籍の広域交付」により、本人・配偶者・父母・子などの戸籍であれば、本籍地以外の市区町村窓口でもまとめて請求できるようになりました。

ただし、広域交付は兄弟姉妹の戸籍は対象外で、本人が窓口に行く必要がある(郵送や代理人による請求はできない)点に注意が必要です。兄弟姉妹が相続人になるケースや数次相続では、従来どおり本籍地への郵送請求が必要になり、1〜2か月かかることもあります。

集めた戸籍をもとに「法定相続情報一覧図」を作っておくと、登記だけでなく銀行の解約手続などでも使い回せて便利です。

STEP3(年末年始):家族で「誰が相続するか」を決める

年末年始は、離れて暮らす家族が顔をそろえる貴重な機会です。ここで「実家は誰が相続するのか」「将来、売るのか住むのか貸すのか」の方向性だけでも決められると、その後の手続が一気に進みます。

話し合いがこじれる原因の多くは、金額ではなく「実家をどうするか」の将来像が共有されていないことです。売却する前提なら代表者1人が相続して売る、住む人がいるならその人が相続する、など、不動産の“出口”から逆算して名義を決めると、感情論になりにくくなります。

STEP4(1月〜2月):遺産分割協議書の作成と署名押印

話し合いの結果を「遺産分割協議書」にまとめ、相続人全員が署名し、実印を押します。あわせて全員分の印鑑証明書を集めます。

相続人が遠方に住んでいる場合は郵送でのやりとりになり、1往復で2〜3週間かかることもあります。押印漏れや住所の書き間違いがあると、もう1往復になりますので注意しましょう。

STEP5(2月〜3月中旬):登記申請

書類がそろったら、不動産の所在地を管轄する法務局へ申請します。

間に合いそうにないと判断したら

STEP3の時点で話し合いがまとまる見込みが立たない場合は、無理に3月を待たず、相続人申告登記(第6章)に切り替える判断をしましょう。


4. 放置するとどうなる?過料よりも怖い「動かせない不動産」

要点:過料(10万円以下)は、法務局からの催告に正当な理由なく応じなかった場合に科されるもので、期限を1日過ぎた瞬間に自動的に請求されるわけではありません。本当のリスクは、名義が古いまま時間が経つほど「売れない・貸せない・直せない」不動産になることです。

本当に怖いのは「時間とともに増える相続人」

多くの不動産と接してきて実感するのは、名義が整っていない不動産は、ビジネスの土俵に上がれないということです。

  • 売れない:登記名義人が亡くなった方のままでは、売買による名義変更ができません
  • 担保にできない:リフォームや建て替えの融資で、金融機関は担保設定を求めます
  • 話がまとまらない:時間が経つと相続人が亡くなり、その子どもへと権利が分散していきます

売却を検討し始めてから「名義が祖父のままだった」と判明し、そこから相続登記をやり直すことになるケースは少なくありません。買主が見つかっているのに登記が整わず、取引の時期がずれ込む――。不動産取引の現場で、これほどもったいない話はありません。


5. 実務でよくある「時間がかかる」5つの落とし穴

要点:スケジュールが遅れる原因の多くは、手続そのものではなく「想定外の発見」です。以下の5つに当てはまる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

落とし穴①:相続人の中に連絡がつかない人がいる

疎遠になった兄弟や、前婚の子がいる場合などです。戸籍の附票から住所を調べ、手紙で連絡を取るところから始まるため、それだけで1〜2か月かかることがあります。

落とし穴②:相続人の中に認知症の方がいる

遺産分割協議には、判断能力が必要です。判断能力が十分でない相続人がいる場合は、成年後見人の選任が必要になることがあり、家庭裁判所の手続で数か月を要します。

落とし穴③:建物が登記されていない(未登記建物)

古い家屋や増築部分、倉庫などは、そもそも建物の登記(表題登記)がされていないことがあります。この場合、相続登記の前に土地家屋調査士による建物の調査と表題登記が必要です。

落とし穴④:取り壊した建物の登記が残っている

「建物はもう解体したのに、登記簿には残っている」というケースです。この場合は建物滅失登記が必要で、本来は取り壊しから1か月以内に申請する義務があります。売却時に必ず指摘されます。

落とし穴⑤:登記簿上の住所・氏名が古いまま

相続とは別に、2026年4月からは住所・氏名の変更登記も義務化されています。相続人自身が所有している不動産の住所が古いままになっていないかも、このタイミングで確認しておきましょう。

③と④は、司法書士だけでは完結しない「表示の登記」の領域です。通常は司法書士と土地家屋調査士の2つの事務所に別々に依頼することになり、日程調整や書類のやりとりで時間がかかりがちです。当事務所では両方の資格を持つ者が一つの窓口で対応するため、未登記建物や滅失登記が絡むケースでも、相続登記と並行して進めることができます。


6. 期限に間に合わないときの最終手段「相続人申告登記」

要点:遺産分割の話し合いが期限までにまとまらない場合は、「相続人申告登記」を申し出ることで、相続登記の申請義務を果たしたことになります。相続人1人から、比較的少ない書類で申し出ることができます。

相続人申告登記は、2024年4月に新設された制度です。

  • 登記名義人について相続が開始したこと
  • 自分がその相続人であること

を法務局(登記官)に申し出ると、申し出た人の氏名・住所が登記簿に記録され、その人については申請義務を履行したものとみなされます。

相続人申告登記のメリット

  • 相続人のうち1人だけでも申し出ができる
  • 自分が相続人であることがわかる戸籍があればよく、全員分の戸籍は不要
  • 登録免許税がかからない

注意点:これは「名義変更」ではない

相続人申告登記は、あくまで「義務を果たすための暫定的な手続」です。誰が不動産を取得したかは登記されないため、売却や担保設定はできません。 また、後日、遺産分割がまとまった場合は、その成立日から3年以内に改めて相続登記を申請する義務が生じます。

「とりあえず相続人申告登記をしておけば安心」と考えるのは半分正解、半分不正解です。過料を避ける手段としては有効ですが、不動産を動かせない状態は何も変わりません。話し合いがまとまる見込みがあるなら、正式な相続登記を目指して進めるのが基本です。


7. 3月末はもう一つの期限|登録免許税の免税措置

要点:相続登記の登録免許税には2つの免税措置があり、現時点ではどちらも2027年3月31日までの登記が適用期限です。数次相続や評価額の低い土地がある方は、義務化の期限と同時に意識しておきましょう。

相続登記をする際は、原則として不動産の固定資産税評価額の**0.4%**の登録免許税がかかります。ただし、次の場合は免税になります。

  1. 数次相続の途中の登記:相続で土地を取得した人が、登記をしないまま亡くなった場合、その亡くなった人を名義人にするための登記(例:祖父→父への登記)
  2. 評価額100万円以下の土地:相続による所有権移転登記などで、土地の価額が100万円以下の場合

相続登記の登録免許税の免税措置についてー法務局

これらの免税措置は過去にも延長されてきた経緯がありますが、今後延長されるかどうかは、本記事執筆時点では決まっていません。「どうせ延長されるだろう」とあてにせず、2027年3月末までの申請を前提に動くのが安全です。


8. 自分でやる?専門家に頼む?判断の目安

要点:相続人が少なく、不動産が1か所で、家族の合意ができているなら自分で申請することも十分可能です。数次相続・未登記建物・遠方の相続人などが絡む場合は、期限を考えると専門家への依頼が現実的です。

自分でもできる可能性が高いケース

  • 相続人が配偶者と子どもだけで、全員と連絡が取れる
  • 不動産が1〜2か所で、同じ法務局の管轄にある
  • 誰が相続するか、すでに家族で合意している
  • 平日に法務局や役所へ行く時間がある

専門家に相談したほうがよいケース

  • 祖父母など何代も前の名義のまま(数次相続)
  • 相続人に連絡がつかない人や判断能力に不安がある人がいる
  • 未登記の建物や、取り壊した建物の登記が残っている
  • 不動産を将来、売却・賃貸・建て替えする予定がある
  • 仕事が忙しく、残り5か月で書類集めをする時間が取れない

専門家選びで意識していただきたいのは、「登記ができるか」だけでなく「その後の不動産をどうするか」まで一緒に考えてくれるかどうかです。相続登記はゴールではなく、資産を次の世代へ引き継ぐ“バトンタッチ”のスタートです。売る・貸す・残すという出口まで見据えて名義を決めておくと、手戻りを防げます。


9. まとめ

  • 2024年4月1日より前に発生した相続で、登記をしていない不動産も相続登記の義務化の対象。
  • 期限は「2027年3月31日」と「取得を知った日から3年」のいずれか遅い日。以前から相続を把握していた方は2027年3月31日が期限。
  • 今から始めるなら、11月:不動産の洗い出し → 11〜12月:戸籍収集 → 年末年始:家族の話し合い → 1〜2月:遺産分割協議書 → 2〜3月:申請、の順で逆算する。
  • 正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象。ただし、いきなり科されるのではなく、法務局の催告に応じない場合に手続が進む。
  • 本当のリスクは、時間とともに相続人が増え、売れない・貸せない・担保にできない不動産になること。
  • 話し合いがまとまらないときは、相続人申告登記で期限内に義務を果たせる。ただし名義変更ではないため、売却などはできない。
  • 数次相続や評価額100万円以下の土地の登録免許税の免税措置も、現時点では2027年3月31日まで。
  • 数次相続・未登記建物・滅失登記が絡む場合は、司法書士と土地家屋調査士の両方の視点が必要になる。

10. よくある質問(Q&A)

Q1. 30年前に亡くなった祖父の名義の土地も、2027年3月31日までに登記しないといけませんか?

A. はい、原則として対象です。2024年4月より前の相続も義務化の対象となり、以前から把握していた場合の期限は2027年3月31日です。祖父から父、父から子へと複数の相続が重なっている場合は、それぞれの相続について手続が必要になるため、早めの着手をおすすめします。

Q2. 期限を過ぎたら、すぐに10万円の過料を払うことになりますか?

A. 自動的に科されるわけではありません。法務局から登記申請を促す催告があり、正当な理由なくそれに応じなかった場合に、裁判所での過料の手続に進む運用です。ただし、催告を受けてから動いても手続の時間は短縮できないため、期限内の申請を目指すのが基本です。

Q3. 兄弟で話し合いがまとまらず、3月までに間に合いそうにありません。どうすればいいですか?

A. 「相続人申告登記」を申し出ることで、申し出た方については申請義務を果たしたことになります。相続人1人からでき、登録免許税もかかりません。ただし、正式な名義変更ではないため、遺産分割がまとまったら、その日から3年以内に改めて相続登記を申請する必要があります。


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